活動実績報告


八ヶ岳山麓観察会[7月11日〜12日 森林観察学習部会]

対象: 会員   場所: 北八ヶ岳
観察会講師:  永沼  治氏
観察コース:

1日目
集合場所〜奥蓼科渋川河畔〜日陰の湯、雨もり〜逆川〜冷山黒曜石調査〜逆川〜麦草峠〜地獄谷調査〜麦草ヒュッテ(泊)
2日目
麦草ヒュッテ〜大石川源流黒曜石調査〜白駒の池〜高見石〜丸山(2330m)〜麦草ヒュッテ〜大滝神社〜集合場所

ダイジェスト

今年の八ヶ岳山麓観察会は、「北八ヶ岳の黒曜石を巡る」と題して、コース案内に会員の野澤さん、講師にはおなじみの永沼治先生をお願いし、麦草峠周辺の黒曜石産出地を訪ねる観察会を行いました。冷山への黒曜石露頭へ向かう道は藪こぎをしながらの上りで歩き難かった他は、比較的楽な行程でした。
説明の枠内には、後日、会員の野澤さん、講師の永沼氏から頂いたコメントを入れました。
カーソルを写真に載せると写真の説明が出ます。 写真をダブルクリックすると、大きな写真が見れます。


1日目
「日陰の湯」
 第1酸化鉄[FeO]が水中の酸素と化合して第2酸化鉄[Fe2O3]となり凝結して淵を作り、脇水を蓄え池を形成した。
日陰の湯 日陰の湯 底から水が湧いている。
 
「雨もり」
 鍾乳洞の鍾乳石同様に第1酸化鉄[FeO]が水中の酸素と化合して第2酸化鉄[Fe2O3]となって凝結したもの。極めて珍しい。
雨もり全景 雨もり

  褐鉄鉱 鉄鉱石の一種
幾種かの含水酸化鉄鉱物の集合したもの。
黄色、黒褐色
火山帯の温泉より沈澱し褐鉄鉱層となる。
鉄分 20-55%  不純物 ケイ酸
  諏訪鉄山 太平洋戦争中から昭和35年頃まで鉄鉱石の採掘が行なわれていた。
(野澤)  

いよいよ、黒曜石露頭を目指して、胸まである熊笹の中、道なき道を藪こぎして行きます。
藪ごぎ

近づくに従って足元に黒曜石がキラキラ。
黒曜石

 
冷山黒曜石露頭 黒曜石の巨岩が斜面にそそり立っています。
黒曜石露頭 集合写真

冷山黒曜石露頭
露頭は冷山の北西800M、標高1,900M付近、比高約8M。
多数の球顆からなる層とシズク状黒曜岩からなる層とが細かく互層して産する場合と、比較的均質な黒曜岩からなる場合とがある。
流紋岩質黒曜石
斑晶  斜長石、黒雲母
石基  ガラス
(野澤)  

観察した植物
シラビソ(白檜曽) マツ科モミ属 シラビソ(白檜曽)
樹皮にできたしわのようなものは「ヤニ袋」。
押すと樹液が出て香りはいいが、苦い?。
ハクサンシャクナゲ(白山石楠花) ツツジ科ツツジ属 ハクサンシャクナゲ(白山石楠花)
ギンリョウソウ(銀竜草) イチヤクソウ科ギンリョウソウ属 ギンリョウソウ(銀竜草) イチヤクソウ科ギンリョウソウ属 ギンリョウソウ(銀竜草)
ブルーの口紅風のラインがあるのは初めて見ました。
       

千駄刈広場 この地区の成り立ちを聞く。千駄(馬一頭の背に草の束3束づつ両側に6束積んで1駄という)の草が刈れる草原だった。
千駄刈広場 刈った草は何に使った?
・水田に鋤き込み、有機肥料、土壌の改良に利用。
・馬の飼料 馬は農耕、物資の輸送の主役だった。
物資は何を何処へ運んだ?
 八ヶ岳のかっ鉄鉱で作った諏訪の鋸、→秩父
  まゆ、寒天、凍り豆腐
 諏訪←石灰(土壌改良の必需品)、塩
地獄谷 見下ろすと岩がごろごろした深いすり鉢。底にはまだ雪が残り、気温は8℃。磁石は狂ってあちこちを差す。この地獄谷がどうして出来たかは、まだ不明なようだ。
地獄谷 上から   地獄谷 底から
上から覗いた底   底から見上げた壁

地獄谷 標高2,130M 大きさ径70M、深さ40Mの円形
新八ヶ岳期の火口跡と考えられ、火口としては最低の位置で最小
地獄谷溶岩 紫蘇輝石普通輝石安山岩
斑晶 斜長石、紫蘇輝石、普通輝石、鉄鉱、カンラン石、石英
(永沼)  

鹿害 鹿の角で皮を剥ぎとった跡
鹿害 シラビソ(白檜曽) マツ科モミ属 オオシラビソオオシラビソ(大白檜曽) マツ科モミ属
シラビソ(白檜曽) オオシラビソ(大白檜曽)

 
夕食後の講義
夜の講義 黒曜石とは石英安山岩の噴出火山岩となる筈の岩漿(マグマ)が、急激に冷却したためにできる天然ガラスのうち緻密で介殻断口を呈するものだそうだ。
今日見た冷山付近の黒曜石が生成された年代は13万年前。

岩石の生成年代測定法

 

放射年代測定法 原子核はプラスの電荷をもつ陽子と、電荷をもたない中性子で構成される。
核は、粒子を出す。このプロセスを放射性崩壊という。ある元素の同位体が、別の元素の同位体に変身するのである。
(炭素14から窒素14への変化など)
これを利用して年代測定を行う。
(野澤)  

2日目
コケモモ(苔桃) ツツジ科スノキ属 風衝植物
 高山の中でも風あたりが強い所に這うように群落を作る。
 コケモモ、ハイマツなど。
コケモモ(苔桃)

国道299を佐久側に下る。道路脇に転がる流紋岩の中に黒曜石の層
流紋岩  
 

付近での植物観察
ヒカゲノカズラ(日陰葛) ヒカゲノカズラ科 ヒカゲノカズラ属 ヒカゲノカズラ(日陰葛)
 胞子のうが立ち上がっている。
ノギアザミ? ノギアザミ(白馬山麓付近の属語。サワアザミのこと) 
 白馬付近ではこれの若芽部分を塩漬けにして常備菜にするため、
 採取のおばさんをよく見かけるそうだ。
シラビソ(白檜曽) マツ科モミ属 シラビソ(白檜曽)
 オオシラビソは葉が密集してすきまが見えない(枝が見えない)が、
 シラビソはあまり密集していないので枝が見える。
 シラビソよりオオシラビソの方が葉を擦ったときの柑橘系の香りが強い。

大石川源流黒曜石露頭 ここの黒曜石には赤味が入ったものが多い。質が良いとザクロ石。
黒曜石露頭 ザクロ石?

オキナグサ(翁草) 白駒の池駐車場の花壇にオキナグサを見つける。
オキナグサ(翁草) キンポウゲ科オキナグサ属 オキナグサ(翁草) キンポウゲ科オキナグサ属 タンポポ、ツクモグサ、チョウノスケソウな同様、子房に付着する冠毛が子房が成熟すると種族維持のため伸長して落下傘型となり飛散する。

白駒の池
 清冽な湖の湖面にオオヒルムシロが群生。湖水の汚濁が進行していることを示すとの説明。
オオヒルムシロ ヒルムシロ科ヒルムシロ属
白駒の池は室内スケートリンクが設置される以前は下諏訪町三協精機スケート部の選手の練習場であった。    (永沼)

高見石から白駒の池
高見石から白駒の池

予定では丸山を登る予定だったが、雨が降り出したので、直接麦草ヒュッテへ戻る。
コメツツジ(米躑躅) ツツジ科ツツジ属 ハイマツ(這松) マツ科マツ属 ハイマツは4年に一度球果を付ける。厳しい環境条件では球果を付けることは精力を使う。
コメツツジ(米躑躅) ハイマツ(這松)
コメツガ マツ科ツガ属 ハクサンシャクナゲ(白山石楠花) ツツジ科ツツジ属 スノキ(酢の木) ツツジ科スノキ属 チョウセンゴヨウ(朝鮮五葉) マツ科マツ属
コメツガ(米栂) ハクサンシャクナゲ
(白山石楠花)
スノキ(酢の木) チョウセンゴヨウ
(朝鮮五葉)

大滝神社の祠
 横谷観音脇の大滝神社の祠が冷山の黒曜石で出来ているというので寄って見る。
大滝神社 祠 昭和16年に作られている。
その頃には重機がなかったのだから、雪のある季節に冷山から馬橇で運んだのだろう。
横から見ると、流紋がきれいに見え、黒曜石がキラキラ光る。

大滝神社 建立 昭和16年
祭神 建御名方神(たけみなかたのかみ)
建立者 鷹野原喜平 茅野市 湖東 新井
(野澤)  

講師から

永沼 治  

天候に恵まれ、良い観察日であった。
参加者が学究的で、観察記録、相互扶助がとれ、他に例のない素晴らしい集団活動であった。
地域におおいに貢献して欲しい。

参加者の声

 

募集中

2009.7.11