事業報告


八ヶ岳山麓観察会[7月8日 森林観察学習部会]

  〜八ケ岳森林軌道史跡を探訪する〜

森林鉄道

今は存在しない八ヶ岳森林鉄道の軌道の跡を探訪し、八ヶ岳文化の一つとして当時の先輩たちの偉業を振り返ろう。

日  時

7月8日(日)午前9時30分〜午後3時まで

場  所

八ヶ岳美術館 駐車場集合 (数台の車に分乗して移動します。)
○(徒歩)美濃戸バス停留所→軌道の崖桟橋跡→三階桟橋跡→美濃戸車庫跡
 →伐木事業所跡まで山の崖路を探索→バス停留所
○(徒歩)四季の森別荘地内軌道跡探訪→四季の森入口の復元跡見学
○昼食(八ヶ岳美術館)
○エコラの森周辺軌道跡(エコーライン)→白山神社(白山駅跡)
 →富士見集木場跡(富士見図書館裏)→八ヶ岳美術館(解散)

ガイド

小川 千里さん

参加者数

23名+スタッフ2名

   

 前日の雨で、実施が危ぶまれましたが何とか開催でき、25名(うち会員12名)の参加で実施しました。 まず、集合場所の八ヶ岳美術館駐車場で、講師小川さんから森林鉄道の概要説明がありました。そこには、当時16歳でトロッコで丸太を運んでいたという中村さんもお出で頂き、実体験を交えながら当時の様子をお話し頂きました。
 次に、予定の講師の他にもう一方大崎さんにも同行して頂き、森林鉄道軌道跡を写真と照らし合わせながら、美濃戸付近から富士見までの跡地を探訪しました。 各所で講師の小川さん、大アさんの説明を受け、参加者からも熱心な質疑があり、有意義な観察会になりました。

トピック

八ヶ岳美術館 駐車場
 本日のスケジュールの説明、森林鉄道の概要説明がありました。

20120610集合 20120610集合

 講師の小川さんからの当時の写真を示しながらの解説、当時16歳でトロッコで丸太を運んでいたという中村さんも駆けつけて下さり、当時の作業の様子など聞かせていただきました。

20120708概要説明 20120708中村さん説明


 徒歩で跡地巡り
 森林鉄道は、スピードが出すぎない3%以下の勾配で線路が敷かれていました。その敷地は固く突き固められているため、今でも判別できます。しかし、線路はありません。木材搬出が終了時点で別な場所に敷設するため撤去されたそうです。今日は、その跡地を歩いてみます。

あの上まで木製の桟橋が掛り、この沢を渡っていました。
20120610桟橋跡

今、参加者が歩いているスペースが軌道跡です。
20120708軌道跡地 20120708軌道跡地
軌道はこの幅 ここは石積みをして幅を確保
20120708レース幅 20120708石垣跡
この沢は桟橋で渡り向こう岸に続きます。
20120708沢 20120708沢
集木場跡地
20120708小屋跡地 20120708小屋跡地

四季の森入口の復元地見学
 レールが敷かれトロッコの上には丸太が乗っています。丸太の縛り方は、振動しても解けずに締まっていく当時の縛り方です。

20120708復元地

当時は丸太に乗ってブレーキを掛ける等の操作をしたという話を聞き、実際に丸太に乗り体感してみました。
度々、脱線することもあり、その度に安全な方へ飛び降り、そしてトロッコを人力で線路に戻すという大変な作業でした。



昼食 八ヶ岳美術館の庭で昼食をとりました。



富士見 A-coop裏 富士見側から美濃戸へ向かって跡地は続きます。

20120708軌道跡地 20120708軌道跡地

富士見図書館敷地 ここは終点の集木場跡です。

20120708集木場跡

富士見図書館裏 この裏の坂下には中央線が走っています。ここを下して、貨車に積み込みました。

20120708集木場跡 20120708中央線富士見駅

参加者の声

八ヶ岳山麓観察会感想

会員参加 小林喜久一

2012年7月8日、八ヶ岳森林文化の会の主催で『八ヶ岳森林軌道』の跡を辿りました。

この森林軌道は、かつて茅野市美濃戸付近から原村の別荘地帯、中新田を通過し現在のJR富士見駅につながる総延長約19kmの木材搬出専用鉄道です。
1939年(昭和14年)から1947年(昭和22年)の約8年間運営されていたそうです。

ガイド役の方に案内していただき、美濃戸付近では柳川沿いの渓谷の急斜面をたどりましたが、こんな難所をトロッコが約3tの丸太を乗せ、さらにその上に人を乗せ走っていたという事実には驚愕しました。

約70年前、木材資源をチェーンソーも重機もトラックも一切使わず、ノコギリで切り出し人力でトロッコにのせ山から運び出していたとはとても信じられない光景です。

谷沿いの軌道を辿る探索は、行きは約70年前の木材積み下ろしの森林軌道を、帰りは現在山麓の田畑をうるおすセギ沿いの道を歩きました。どちらも人が生きる糧とする、山々からの恵みの降りる道でした。
またJR富士見駅付近のコミュニティプラザや、あぐりモールふじみの後方付近で軌道の跡を確認しました。

20120708急斜面
20120708急斜面

今回はこの地域に生きた人々の偉業の軌跡をたどりました。
そこには戦前・戦中・戦後と大きく揺れ動いた時代に、山々からの恵みを受けながら、人々が力をあわせ、力強くそしてたくましく生きた証しがあったと感じました。
復元された、レールの上の実物大のトロッコとそこに積まれた丸太を見るにつけ、次第にこのトロッコが急斜面の谷沿いを走り抜け、ふもとの村々の中を駆け抜ける姿が目に浮かぶようでした。

今現在に同様なことをして森林資源を運び出すこと事体に大きな意味があるとは思えませんが、今は姿を消してしまった森林軌道のレールを辿ることは同じ山麓に住み山々の恩恵を受け生きる者が、その恩恵を未来にどの様につなげていくか、それを模索していく礎になるものと思います。

今回の企画をされた八ヶ岳森林文化の会の方々、ご案内いただいた「よみがえれ、八ヶ岳森林軌道」専門部会の方々に感謝します。

2012.7.8