0

H30年度 事業計画・報告

今、森林整備事業部は(H30年度)


この「今、森林整備事業部は」というタイトルで、事務局だより毎号に連載しています。



2018.3.31

森林整備事業部全体会議開催

 平成30年度森林整備事業部の活動の目的と施業方法(2年目となる環境林整備事業について)の説明。
森林整備事業部作業安全指針及び決まりの確認。
これまでのヒヤリハット例から伐倒等の安全学習。
また昨年発生した事故に伴い行われた安全講習会の報告と広葉樹大径木の模範伐倒DVD映写が行われました。
平成30年度森林整備事業部員は35名です。

<平成30年度役員・担当スタッフ紹介>
 部長;山本 副部長:狭川・矢崎
 安全教育担当:川手・矢崎
 新入部員指導及び重機操作指導担当:鶴田
 測量図・地図作成担当:宮坂

全体会議



2018.4.14

平成30年度作業始まる

山の神に今年度作業の安全祈願 作業前のストレッチ 現場の説明と山わり
安全祈願 ストレッチ 山わり


山本部長による広葉樹大径木模範伐倒 ≪追いツル伐り≫

裂け防止ロープ巻 受け口をつくる 受け口中央に
浅く刃を入れる
突っ込み切り ツル切り
裂け防止ロープ巻 受け口をつくる 受け口中央に浅く刃を入れる 突っ込み切り ツル切り
矢印 矢印 矢印 矢印
受け口はやや大きめ 裂け防止の芯切り 受け口底辺と並行に刃を入れる 最後にツルを追って伐る
受け口はやや大きめ 裂け防止の芯切り 受け口底辺と並行に
刃を入れる
最後にツルを追って伐る

2018.4.18 4.25

安全作業勉強会
 今年度から、作業日雨天時には事務所において森林整備作業を安全に行うための伐倒方法などについて座学を行うことになりました。
 部員間の意思疎通の場としても、是非ご参加を!



2018.5.16


 

 蔓がらみの木を一斉に伐倒する実習

①

①

★伐倒する立木に絡んでいる蔓は予め取り除いておく(根元を切り枯らしておくか外しておく。)が、 つる切りができない場合、蔓が絡んだまま複数の立木を同時に伐倒する方法。
①つると枯木イを伐る。
②1,2,3同じ方向へ倒すので、かかり木にならないように周囲の立木を整理(伐倒)する。
③1の受け口を大きめに作り、追い口を伐って矢を打つ。矢の深さは更に打ち込めば倒れる程の状態に。
④2、3も順に1と同じ方向へ倒れるよう、受け口、追い口を伐りそれぞれ同じように矢を打つ。
⑤最後に3のくさびを強く打ち込み一斉に倒す。
⑤
⑥絡んでいた蔓、伐倒後の処理→これが大変!
⑥


2018.6


 

今年の作業現場はかつて豪雨災害が起き、その後放置されている、市民の森北側横河川沿い急斜面です。ところどころに崩壊した斜面があり、細い雑木が生い茂り、太い蔓が何本も絡みあい、作業は非常に危険を伴い細心の注意が必要です。(蔓がらみの伐倒法については5月号参照)

雑木急斜面
雑木急斜面
崩壊斜面
崩壊斜面
 

 そこで、今年は作業前に皆で当日の現場を見、大まかな作業手順を確認しています。

藪をかき分け
藪をかき分け
今日の現場へ
今日の現場へ
 

 それでも疑問が残る箇所については、諏訪地域振興局林務課の平林さんに検分をしてもらい、除地についてなどのアドバイスをしていただきました。

●疎林や蔓がらみで同時に多数伐倒し0.1ha以上の空地になる可能性のある所は初めから除地にする。
●植樹以外の雑木林分においては、将来活用可能な木をなるべく残す。

 

 そのような過酷な現場でも、楽しみはあります!

小鹿のご挨拶
小鹿のご挨拶
ムラサキツユクサ
ムラサキツユクサ
白花
白花

2018.7.14


 

 7月14日、森林整備事業夏休み前の一日、現在作業をしている北コース周辺の樹木と地形地質の観察会が行われました。参加者は会員11名。  地形地質については市民の森ガイドブックの「吉田山の形成と地質」を執筆してくださった野沢さん、樹木については事務局長で森林インストラクターの井村さんに教えていただきながら、会員のみの気安さか、「ああだ、こうだ」言いながらの楽しい観察会でした。

 初めに、この市民の森は九州~四国~紀伊半島~諏訪湖に至る大断層・中央構造線とホッサマグナの西縁(糸魚川静岡構造線)の交点近くに位置し、地質は1500万年前の第三紀中新世時代の深成岩からなり、岩石は石英閃緑岩で石英、黒雲母、斜長石など様々な鉱物で構成されている。そのため、それぞれの鉱物の膨張率が異なるため崩壊しやすく、マサ化した地質であることなど、市民の森の土台についてお聞きした。

 

①横河口~池分岐標識

 

 このエリアは急峻な谷を含む、一次間伐後のカラマツ林で、入口には茅野高校生による広葉樹の植林地(0.04ha)がある。これからも生徒による見守りを期待したい。
 カラマツ林内にはオニグルミ、クリ、エゾエノキ、コナラ、コブシ、ホウなどの高木類、林床にはツツジ類、クサギ、アブラチャンなど種々な小高木・低木類が茂っている。エゾエノキ周辺にはオオムラサキの輪舞が見られ皆で感激した。

 ちょっと目を引くのは二本の高杉。何か意味ありげに立っている。 意味?と言えば、ここには謎の横穴がある。これは「炭焼き窯」「貯蔵庫」「古墳」等諸説あるが、今は謎のままとどめておこう。

 

②池分岐右~北コース

 ここは何本かの谷を含むエリアで、謎の横穴上部谷筋にはかつて石を切り出した跡がある。谷の急斜面を雪や馬を利用して石材を引き出したと思われる。石材は、水道が敷かれる昭和30年代以前には、井戸や川の水を生活水に使用していたので、その敷石や橋などに利用されていたのではないか。

 

 北コースで特徴的な樹木はエゴノキ、ハクウンボク、北斜面を覆うように群生するコアジサイ、そして信濃の国の名にも残るシナノキの大木。シナノキはその樹皮から繊維がとれ、古来その繊維から「しな布」と呼ばれる布が作られている。

 

③北コース~横河川沿い上

 このエリアはゴルフ場の痕跡(影響)がよく見られる。芝生、バンカーの砂地、雨水を貯める溜池と流す土管。この土管が埋められていた北斜面は崩れている箇所が多数あり、水が流れ出る度に崩れが広がっているようだ。そのような所には草木が生えにくい。

 

 何故北斜面に崩壊地が多いのか?北斜面は冬の凍みと春からの凍解を繰り返すことで、花崗岩質の土地ではマサ化が進み、鋸歯状地形といわれる崩壊地が連なる地形となる。
 ここの樹木の特徴はアカマツの叢立と湿地系のヤシャブシ・ハンノキそしてシラカバ(倒木が多い)。
 これは開発された土地や災害崩壊地に特徴的な様相で、陽が当たるようになった土地へ先駆樹種と言われる樹木が一早く飛び込み一斉に芽を出すためだ。
 急傾斜や崩壊地を含むこの周辺一帯は現在事業部が環境林整備を行っています。この現状を事業部員以外の会員に見てもらい、また、森林観察学習部などの会員からは地形地質や樹木の特徴などを教えてもらうことにより、我々の主なフィールドである市民の森をより知り共有できたのではないか。そしてその共通認識が今後の活動に活かしていかれたらよいなと思いました。


<おまけ>
重装備が必要な樹木巡りではありません。 いらない物を選んで出すのが面倒、事業部夏休みにも鍛錬というK氏でした。


2018.8.27


 

 いよいよ、今年度後期の作業が始まりました。後期初日の22日はこれから入るエリアの蔓切りと十何年前に伐採されてそのまま放置された材の整理などを行いました。この日の参加者は6名でしたが、あの暑さと1ヶ月半ぶりの作業ということもあり、午前中でへとへとという有様でした。  ちなみに、22日、25日とも熱中症予防のため、作業は午前中のみで切り上げました。
 ひとつの発見がありました。崩壊地西端脇、川岸から10m~20m程度の所から西に向かって高さ約2mの土留が造られていました。それは西側奥まで続いていましたが、どこまで続いているか奥の方へ入ってみないとわかりません。 砂防堰堤造営時?に土砂流出防止のために造られたものと推定されますが、周辺の今後の整備により、全体像が分かってくると思います。


特集 森林整備事業部の伐木作業時の基本的な服装


2018.9.24


 

 「市民の池」の東側は毎年ニセアカシアが繁茂し刈り取りをしています。
 今年は10月28日に行われる「育林祭」の植林地となるので、根まで抜き取る本格的な除去作業を行っています。
 伐根作業はバックホーで根を掘り起こし、人手で抜き取り、纏めて片付けるという地味に見えるが、かなり大変な仕事です。 伐根だけに根気が必要!!
 よい植林地になるよう一同頑張っています。


背丈ほど伸びたニセアカシア
背丈ほど伸びたニセアカシア

伐根作業
伐根作業

整地(まだ完成形でない)
整地(まだ完成形でない)

こんな発見も

白樺の樹皮や草で作られた鳥の巣
白樺の樹皮や草で作られた鳥の巣

美味しそうなタマゴタケ
美味しそうなタマゴタケ


2018.10.6


 

 10月6日(土)に茅野市「市民の森」吉田山頂上広場から北コースを降り、途中左の林道に入り、小さな広場に駐車しました。 参加者の山割を受け、準備し、当日の間伐エリアに入るため、山を登り始めたところ、前方右手奥のカラマツの中ほどに大きな“鳥の巣”(と思われる)を発見し、写真に撮りました。 昼食時に、“鳥の巣”の話をして、5月の長野県諏訪地域振興局林務課から林業業者に対し、猛禽類の巣を発見した場合は、届け出る旨の通達を思い出し、写真を添付し、報告しました。

鳥の巣



鳥の巣

 諏訪地域振興局林務課から、茅野市の野鳥の会等と相談し、対応して欲しい旨の回答があり、井村(悦)さん、矢崎さんに連絡し、野鳥の会の方からコメントを頂きました。

 

<日本野鳥の会諏訪支部 両角氏談要約>
今の時期は営巣していないため、同定はできない。同定するとしたら、2月から3月の巣づくり時期に観察する必要がある。市民の森の巣の地区から考えられるのは、オオタカ、ノスリ、フクロウ。これらは、同じ巣を再利用するので、誰が使っているか営巣していないと判別できない。また、オオタカは絶滅危惧種から外れ、準絶滅危惧種となったので、巣の50m以内の樹木の保全程度でよいのではないか。

 

 と いうことでした。 来春、営巣時期に観察したいと思います。
来年2~3月の入山については、吉田山が狩猟期間のため、関連部署と相談の上実施します。
 尚、今年度の吉田山間伐エリアは、当会の森林整備事業部の間伐参加者に周知し、”巣”と思われる50m以内の間伐は行わないことになりました。


2018.11.10


 

 本年度の森林整備事業部の間伐作業は11月10日をもって無事終了しました。
 当日は、重機の片付けや来年度間伐予定地のつる切りなどを行った後、打ち上げの昼食会が行われ、山本部長から今年度の事業成果報告がありました。(参加者8名)
 面白いのは、酒飲みの面々がノンアルビールのクオリティーを口々に褒めていた。へ~っ!
 今年度の森林整備範囲は横河川に沿った北コース斜面を含む約9haのエリアで、除地(エリア内の間伐対象外地)を差し引く約7haが今年度補助事業の対象となります。会の測量日は11月3日に実施しましたが、県振興局検査後に確定します。
 全作業日数51日(4月14日~11月10日)のうち、雨天作業中止は13日。延べ作業人数は413人/半日となりました。

*測量風景(11.3)

8:40

16:20

8:40元気に出発!
元気に出発!

重い杭もまだまだ余裕
重い杭もまだまだ余裕

伐倒木に足を取られつつ
伐倒木に足を取られつつ

16:20さすがにお疲れの背中
さすがにお疲れの背中


 

 このエリアには何箇所か崩壊地(下写真 ゴルフ場開発に伴う)があり、その様子は7月14日の樹木巡りで事業部員以外の会員にも見ていただきました。
 どの崩れも横河川へ流れ込んでいます。
 ところで知っていましたか?土管というのは陶器製の管のこと。市民の森で見られるコンクリート製の管(鉄筋入りも含む)はヒューム管といい、その寿命は約50年だそう。自然に還るにはあと何年かかるかのでしょう?

*北斜面崩壊地の例① 常に水が滴り、崩れつつある。草木はほとんど生えていない。

北斜面の崩れ
北斜面の崩れ

露出したヒューム管
露出したヒューム管

流れは横河川へ
流れは横河川へ

*北斜面崩壊地の例② 内にはアカマツ・カラマツの実生が生え、夏はススキで覆われる。

北斜面NO.1の崩れ
北斜面NO.1の崩れ

土留め(?)の壁も崩れている
土留め(?)の壁も崩れている

全ての流れは横河川へ続く
全ての流れは横河川へ続く


 

 実際に現場に入ると、急斜面のうえに枯損木や蔓がらみ(写真1)も多く、掛かり木になるケースが多発、もっと腕を磨き伐倒の精度を上げなくてはならない!と思うのですが、反面、チルホールや重機等機器の使用(写真2)もまた学びの一環とも思われます。
 また今年度は、雨天時に川手安全担当委員が主導し、「吉田山間伐作業ガイドライン(仮称)」作成のための検討会兼座学が行われたました。
 この中には昨年の事故(オニグルミ大径木伐倒中の裂けによるYの骨折)の反省から、自らのヒヤリハット事例(写真3)などを検証し、より身近な「安全指針」を掲載する予定です。

*枯損木&蔓
(写真1)

*チルホール使用による伐倒
(写真2)

*今年最後のヒヤリハット事例(根張り切り)
(写真3)

蔓がらみで枯れたカラマツ

チルホールを使用しての伐倒作業

根張りを切り幹が裂け倒れた

張り切りとは、根が張り出していて伐倒がしにくい大径木の根を、あらかじめ取り除いて伐倒し易くする方法。伐倒方向反対側の根張りは切ってはいけない。

蔓がらみで枯れたカラマツ

チルホールを使用しての伐倒作業

追い口側の根張りを切り幹が裂け倒れた。


 

 市民の森・吉田山は昭和40年代、ゴルフ場に開発され土砂災害を起こしましたが、現在緑が回復しつつあります。私たちはその歴史を知りつつ森林整備にかかわることが大事だと思います。 縄文の昔から人と共に在ったこの山がこれからも緑豊かな森林(もり)として、人に寄り添い在り続けてほしい。そのために微力ながら当会が市民の森づくりに関われたら幸いです。

*適度に整備された森を歩くと、心地よい風景や動植物そして人の営みの痕跡に出会えます。

木漏れ日さす散策路
木漏れ日さす散策路

市民の池
市民の池

山の神と紅葉
山の神と紅葉

石切り場

炭窯か?

オオムラサキ

マルバスミレ

石切り場とその下の謎の横穴(炭窯か?)

可愛いオオムラサキの幼虫やマルバスミレ
  また来年会いましょう!


2018.12.6


 

 前号でお知らせしましたが、作業は11月10日で終了し、12月6日に諏訪地域振興局による検査があり、当会から3名が同行しました。
 申請範囲の間伐状況の確認、範囲の外周線抽出測量(距離、方位、斜度)、諏訪地域振興局設定プロット・当会設定プロットの検査(間伐率、玉切り状況、林齢確認等)等が行われました。
 検査後、ワシ・タカ類の巣周囲等の除地とするべく範囲についての指導・指摘があり、提出書類の確認が行われました。
 その指導・指摘を踏まえ、数ヶ所の除地の測量を行い、修正測量図を提出しました。
 平成30年度森林整備成果は次ページ図参照

*検査風景

プロット測量確認
プロット測量確認

間伐地確認
間伐地確認

申請書類確認・審査
申請書類確認・審査

伐倒木の混んだ年輪
伐倒木の混んだ年輪

*間伐地概略図

*測量図

間伐地概要

測量図


2019.2.26


 

≪平成31年度森林整備について≫

 

 来年度、森林整備を行う区域は山頂広場周辺を予定しています。(赤色斜線部分)
 山頂直下東南側はアカマツが生い茂っています。そもそも、アカマツはマツ科マツ属の常緑高木で、日が当たり乾燥し痩せた土地を好み生育する「陽樹」と言われる樹木です。マツタケは、長年落ち葉を掻き、柴を刈るなどし、人為的に貧栄養化した松林に生えるそうです。市民の森のアカマツ林の場合、ゴルフ場開発による皆伐や、表土を剥いで生じた空間に生育したものと思われます。

本年の間伐地 山頂広場
 本年の間伐地 山頂広場
  アカマツ林
アカマツ林

 山頂広場直下南西はかつて崩れが生じた跡があり、その斜面は細いヤマハンノキの林になっています。ハンノキ類は湿地を好み、崩壊地などに真っ先に進出するので、パイオニア樹種と呼ばれています。

  ヤマハンノキ林
ヤマハンノキ林
カエデの森 水車
カエデの森     水車
 

 その下方にはゴルフ場開発時に建設された10m程の土留めと排水管があり、それは林の中から忽然と現れ、まるで古代遺跡かのようです(?)。

排水管 土留め壁
排水管と土留め壁
   私たちは、物心共に恵みをいただいている市民の森の整備を、その未来の姿を描きつつコツコツ進めていけたら、それは森づくり、ひいては地域づくりに貢献することにもなると思います。そして、何と言っても仲間と共に額に汗し頑張ることは楽しい。
皆さんも是非体感しましょう!只今部員募集中!!

私たちは、このような活動を通じて人と森林との新たな関係を作り出し、豊かな森林を次世代にバトンタッチしたいと願っています。