今、市民の森は!  (H28年度)


  このタイトルで、事務局だより毎号に連載しています。


2016.3.27   プロローグ 

 狩猟期間が明けたので市民の森に出かけてみました。
 春一番の花ツノハシバミ、アブラチャンの花が、もうほころび始めていました。
 例年と違うのは、どこにも雪がないこと。雪による倒木がないこと。動物の死骸に遭遇しなかったこと。
 地面が雪で覆われていないので、冬を越したロゼットの上で花を付けたタネツケバナやオオイヌフグリの青い花が目立ちました。
 タネツケバナの名前は「この花が咲くと、種籾を水につけて田植えの準備を始めた」というのが由来のようです。農家ではもう種籾を水につけたのでしょうか。

タネツケバナ

タネツケバナ(種漬花)
 アブラナ科 タネツケバナ属 越年草


2016.4.15 

 今の季節、市民の森の駐車場付近に繁茂しているのは、カキドオシ(垣通)。 名前の漢字からも連想されますが、茎が長く1m以上にもなり、垣根を通して向こうまで伸びることからの命名のようです。 また、幼児のカンを治す薬草として知られカントリソウという別名もあります。 茎と葉にはツンとしたハーブのような匂いがして、庭の草取りなどの作業をしていて踏むと存在が分かります。 しかし、その匂いは好む方、好まない方、色々です。 花期は長く、まだまだ、見られます。見つけたら、匂いを確かめて見て下さい。好きな匂い?嫌いな臭い?

カキドオシ

カキドオシ(垣通)
 シソ科 カキドオシ属 つる性の多年草


2016.5.10 

 カスミザクラ、ウワミズザクラが咲き終わり、 森の樹木の緑も濃くなるころになると、ミヤマザクラが咲き始めます。
 このサクラは、首うなだれて下向きに咲く桜の花と違い、雄しべが長く上向きに梅の花のように咲きます。 色も真っ白で、まつ毛パッチリの美人の風情です。
 山渓カラー年鑑には「日本各地の深山に生える」とありますが、諏訪教育会発行の「諏訪の植物」には 「平地にもある」とあります。昔は諏訪地方事態が深山だったのかなあ?

カキドオシ

ミヤマザクラ(深山桜)
 バラ科 サクラ属 落葉高木


2016.6.21 

 アワブキの花のつぼみが大分大きくなってきました。
 ガイドブックのアワブキ満開の写真は2011年7月5日に撮られていますが、今年は1週間は早いだろうと思われ、6月末にはきっと満開でしょう。
 アワブキの名前の由来は、木を燃やすと切り口から泡を吹くことからと言われていますが、この木を燃やす体験はしていません。
 この木はスミナガシという蝶の幼虫の食樹です。今年もこの木の葉の先で幼虫を5頭も見つけました。幼虫はこれからモリモリ食べて蛹になり、8月には羽化します。これから、羽化が見れるのを楽しみに観察を続けます。

アワブキ

アワブキ(泡吹)
 アワブキ科 アワブキ属 落葉高木


2016.7.8 

 この季節、枝の先にアジサイに似た白い花をつけるのはノリウツギ。アジサイの仲間ですが、花序が円錐形となるので開花時の趣が少し異なります。 花期がアジサイより遅く、夏の花の少ない時期に彩を添えてくれます。
 名は、樹液を和紙を漉くときの糊に利用したため、ノリウツギ(糊空木)と付いたそうです。
 花は枯れてからも、薄茶色になってドライフラワーのようになって残り、冬の散歩道の目を楽しませてくれます。
 この木はシカが好きなようで、シカの口が届く高さまでの枝は、折られ、食べられ、シカ害の多い木ではないかと思います。

ノリウツギ

ノリウツギ(糊空木)
 ユキノシタ科 アジサイ属 落葉低木


2016.8.16 

 コナラのドングリが大分成長してきました。
 市民の森では、標高的にコナラがメインですが、あちこちにミズナラも見かけます。
 コナラとミズナラの見分け方の一つは、葉のつき方です。コナラの葉は枝につく葉柄 (葉が枝につながる柄のような部分)が長くはっきりしていますが、ミズナラでは短く、 ないようにも見えます。
 生育地にも違いがあり、コナラは低山に生育し集落の近くで薪炭林として管理されてきました。 一方、ミズナラは乾燥地にも適しており標高の高いところで生育しています。材に多量の水分を含んでいる ことからミズナラの名が付けられました。コナラという名はこのミズナラの別名がオオナラであり、 これと比較しコナラとなったと言われています。

コナラ

コナラ(小楢)
 ブナ科 コナラ属 落葉高木 雌雄同株


2016.9.14 

 今、市民の森の沢沿いなどの湿ったところで、 ツリフネソウが群れて花を咲かせています。
 花の形が帆掛け船を吊り下げたように見えることから、この名がついたそうです。 ほんとに花を横向きにして真ん中程の所を上から吊り下げています。
 花を観察していると、よくマルハナバチの仲間が花に潜り込んでいるのを見かけます。 花の奥の距(写真の花の左側)には蜜があり、その蜜を吸いにやってきて丁度背中の部分が雄しべ、 雌しべにふれ、受粉に貢献しているのだそうです。
 同じ形をした黄色の花はキツリフネといい、市民の森ではあまり群生は見かけず、ちらほら見かける程度です。

ツリフネソウ

ツリフネソウ(釣船草)
 ツリフネソウ科 ツリフネソウ属 一年草


2016.10.11 

 図鑑の記述によると、「野や山にごく普通に 生える50cm〜100cmの多年草」です。確かに、今の季節、野や山の多いこの地にはどこに でも群れて咲いています。
 名前は野に咲く紺色の菊という意味でついたそうです。園芸種の紺菊(コンギク)は、古い昔に ノコンギクの青紫色が濃いものを選抜して栽培して作り出したものと言われています。
 秋は菊の季節。ノコンギクの他に、ユウガギク、ゴマナ、リュウノウギクが群れています。 今年、これらのキクとちょっと違ったキク科の植物を見つけ、同定をお願いしたところ、 シロヨメナと判明しました。また一つ、市民の森の植物の種類が増えました

ノコンギク

ノコンギク(野紺菊)
 キク科 シオン属 多年草


2016.11.8 

 こんな果実の殻をドライフラワーの店で見かけませんか。
 これはウバユリの果実の殻です。花が咲く時には葉が枯れているので、葉を歯がない姥にたとえて、 姥百合となったと言われています。
 この写真ではまだぎっしりと種が残っています。種は薄くUFOのように周りに翼が付き、 風で飛びます。籠状のガードは危険分散で沢山の種を一度の飛ばさず、風が吹くたびに少しずつ 時期をずらして飛ばす作戦に見えますが、どうでしょう。

ノコンギク

ウバユリ(姥百合)
 ユリ科 ウバユリ属 多年草

2015.3.30