R01年度 事業計画・報告

今、市民の森は!  (R01年度)


この「今、市民の森は!」というタイトルで、事務局だより毎号に連載しています。
本コーナーは事務局だより第2号から、毎回植物の異なる種を選んで計59種紹介しました。
H29年度、H30年度は、昆虫に目を移し計23種紹介しました。
今年度は、その月の市民の森でのトッピクを紹介します。


2019.4.19

今、市民の森だけではなく、どこの林でも、黄色の小さな花がたくさんついた低木が目立ちます。 上の写真はダンコウバイですが、アブラチャンもよく似ています。今回は、その見分け方を少し。

ダンコウバイ

見分け方

市民の森では、沢沿いの湿った地域にアブラチャン、尾根筋にダンコウバイという傾向がみられます。
人家の庭に見かける似た花はサンシュユという木ですから、お間違いなく。


2019.5.8

春、5月初めにワイワイ群れて出ている写真の植物は、ヒトリシズカ(一人静)という名前の植物です。
これが花?と思いますよね。
今回は、この花の構造をちょっと。

ヒトリシズカ

花の構造

雄しべは、花粉を入れる袋状の葯(やく)と葯を支える花糸(かし)という部分でできています。私たちのなじみ深い花は、花糸の先端に葯がありますが、ヒトリシズカは根元にあります。
雌しべは、花糸の根元にあります。
花弁はありませんが、これが花で、子孫が残せます。
なぜ、こんな構造になっているのでしょうね


2019.6.5

オトシブミ

今の季節、コナラの葉先がロート状に丸まっているのを見かけます。よく見ると、葉っぱの切り方、葉先の丸め方みな同じパターン。作者は誰?
こういう時には、文一総合出版「オトシブミ ハンドブック」が役立ちます。

葉の切り方

検索表が載っていてそれに沿って、調べてみます。
「葉の一部でつくられる」→「円錐形」→「裁断線は長短の2本」→ミヤマイクビチョッキリ
犯人の写真は撮れませんでした。次回以降のお楽しみに。


2019.7.17

シナノキ

今年オープンした北コースの中ほど(昔、ジープの残骸が在った所)にシナノキの大木があります。今年は沢山の花が付き、今満開です。

シナノキの花の特徴は、集散花序の柄にヘラ状の苞がついていることです。
  花の構造

タネが熟すとヘラ付きのまま枝を離れ、風に乗ってヘリコプターのようにくるくる回って新天地を目指す風媒花と言われています。しかし、この形状でどれくらい移動できるのでしょう。 市民の森でシナノキを観察しているのは、今の所、この尾根筋だけです。ということは、新天地を目指す戦略としては余りに頼りない感じがしますが、実際、どうなのでしょう。飛翔実験でもしてみないと、うかつなことは言えませんが…。 茅野駅の東口の街路樹にシナノキがあり、今年も沢山花が咲いていたそうですから、手軽にプロペラ付きタネは採取できます。興味がある方は実験して結果をお知らせください。

2019.8.20

ツユクサ

今の時期に湿った場所で、すっきりした青の花弁をミッキーマウスの耳のように立てて咲いているのは、ツユクサです。
この花の構造は、花弁が3枚、上部の2枚は青、下部の小さな1枚が白です。
雌しべは1本、雄しべは花粉を出す2本が雌しべと一緒に突出し、花粉を出さない雄しべが上部に4本飾りのようについています。
花粉をださない雄しべは何のためについているのでしょう。

ツユクサの構造

多田多恵子さんの著書「したたかな植物たち」に解説されているツユクサのしたたかさを、紹介します。
花粉を虫の身体につけて運んでもらう時に、虫は花粉も食べてしまいます。そこで、ツユクサは多量に食べられては花粉の生産エネルギーが勿体ないと、花粉をつくらない飾りの雄しべをつけて虫を誘うという戦略をとっているというのです。
これだけの仕掛けを獲得するまでに気が遠くなるような年月がかかっているのでしょうね。


2019.9.10

池のほとりに、あまり見かけない風情のキク科の植物を見つけました。

シラヤマギク葉

根元を見ると、キク科らしくない柄の長い心形(ハート形)の葉がついています。これはシラヤマギクですね。
市民の森の観察記録では、2008年以来観察されていませんでしたので、ガイドブックにも掲載されていません。
まだまだ、ガイドブックに掲載されていない種を見つけることが多く、「ガイドブック3もありかな?」と思う今日この頃。


2019.10.2

今の季節、タンポポのタネのボンボンのようなセンボンヤリの茶色のボンボンが、あちこちの荒れ地で林立しています。

センボンヤリは、春花と秋花があり、春花も受粉してタネを付けますが、秋花は蕾のまま開かず自家受粉してタネを作ります。

センボンヤリ春花
センボンヤリ 春花

センボンヤリ秋花
センボンヤリ 秋花

この秋花のタネのボンボンが林立するのを、大名行列の毛槍をイメージしてセンボンヤリと命名されたそうです。
春花だけでは子孫を残すのは心もとない、秋に再び、花を付け自家受粉で確実にタネを作り子孫を維持しようという作戦、用意周到ですね。


2019.11.14

オオムラサキの糸

11月14日、閉山になる市民の森のエゾエノキの樹皮を日光に透かして見ると、光る糸が沢山見えました。上の写真右側の矢印の先の縦線、遠景はボケていますが、左側の矢印の先の光った縦線、その他にも何本もあります。
今の季節のこの糸は、オオムラサキの幼虫が越冬のため枝から根元へ移動した証拠です。

オオムラサキの幼虫

根元の落葉を少し捲ってみると、すぐにオオムラサキの幼虫と出会うことができました。
11月5日の月例観察会最終回では観察することができず、皆で残念がっていたのですが、確認ができ安心しました。

新聞、テレビのニュースなどで取り上げられたので、既にご存知の方も多いと思いますが、環境省が2003年から実施している生物多様性に関する「モニタリングサイト1000」と呼ばれる調査結果が発表されました。 その中で1年あたりの減少率15%以上を示した蝶6種の中にオオムラサキが入っていました。
この15%以上の減少率というのは、絶滅危惧1A類の基準に当たります。原因は、オオムラサキ幼虫の食草エノキ(この辺ではエゾエノキ)が自生する里山が減っていることが考えられます。
その意味でもオオムラサキのいる市民の森は貴重な存在です。
この貴重な市民の森を来年も見守っていきます。


2019.12.26

★今、市民の森は冬休みなので、今年出会った動植物を中心に、それにまつわる話を掲載します。

カマツカ

今年、炭焼き小屋のすぐ脇の茂みに、カマツカを見つけました。
カマツカは、昔から、石屋さんの「げんのう」の柄に使われてきたそうです。それは、石を割った時に“しなり”、手に直接衝撃がこないようにクッションがあり、かつ折れることのない丈夫な木だからだそうです。
カマツカ(鎌柄) バラ科 カマツカ属 落葉小高木

我々の先人は長い経験の末に、それぞれの木の特性を見つけて、有効に利用してきました。
こけら割り(屋根ふき用の薄板を割る)の職人さんが使う槌はイタヤカエデ、大工さんが使う鉋の台はカシ、船をこぐ櫓もカシ、これは固くて丈夫だから。
鋸の柄には桐、これは長い間使っても熱を持たないから。
風呂桶には水に強い、ヒノキ、ヒバ、船はスギ、寺の塔や銅はヒノキ、爪楊枝はクロモジ、工事に使う杭や土台は松などなど。これら木の使い方は、日本書紀にも記載されていたそうです。
私たちは、自然から遠ざかり、進歩したのでしょうかね。
  参考:「木の教え」塩野米松著


2020.1.30

★今、市民の森は冬休みなので、今年出会った動植物を中心に、それにまつわる話を掲載します。

カマツカ

夏から秋にかけ、ヌルデの複葉部に実のようなものがついているのを見かけることがあります。(写真左)
これはヌルデノミミフシといい、アブラムシ(ヌルデシロアブラムシ)が原因で生じる虫こぶ(ゴール)です。

虫こぶとは植物が虫などに摂食された際、被害が全体に及ぶのを防ぐため植物がとる防衛策です(組織を増殖しコブを作り、その中に虫などを閉じ込める作戦)。一方、寄生する虫にとっては、安全な場所と食糧を得たことになります。
ヌルデの虫こぶはタンニンを多く含み「五倍子(ごばいし)」と呼ばれ、かつては虫歯予防効果があるとされ、お歯黒に利用されていました。1800年代には高級染料として諸外国に輸出もされていたそうです。参考:松本義幸著「アブラムシ入門」、薄葉重著「虫こぶ入門」

夏の虫こぶ(アブラムシ増殖中)
夏の虫こぶ(アブラムシ増殖中)

秋の虫こぶ(アブラムシ旅立ち準備)
秋の虫こぶ(アブラムシ旅立ち準備)

ヌルデ(白膠木) 別名:フシノキ、カチノキ
   ウルシ科 ウルシ属 落葉小高木
幹を傷つけると白い樹液がでる。
房状の実が熟すと白い粉が吹き、なめるとリンゴ酸カルシウムという成分のせいで塩辛い。


2020.2.29

★今、市民の森は冬休みなので、今年出会った動植物を中心に、それにまつわる話を掲載します。

メジロ
2019.8.2

野鳥の姿をコンパクトカメラで撮影するのは難しいのですが、この日は幸運にもメジロを撮ることができました。 目のまわりが白く鶯色の身体、間違いなくメジロです。
メジロ(目白):スズメ目 メジロ科 メジロ属

昔から、「梅に鶯」として梅の木に鶯色の鳥がとまっている絵が描かれていますが、これは、ウグイスではなく、メジロのようです。ウグイスは鶯色ではないし、もっと地味ですよね。
メジロは梅の蜜を好み、早春には梅の花を求めて飛び交います。「梅に鶯」という言葉は、2つのものが調和している様を表す表現に使われます。
また、混みあって並ぶ様子を「めじろ押し」という言葉で表現されますが、これは、冬にメジロが群れで枝にとまる習性があり、同じ枝で押し合い圧し合いしていることに由来するそうです。
諺には、多くの動植物が登場します。昔の人々は自然をよく観察し、愛で、自然に習って生活をしていたのだと感じます。

   

私たちは、このような活動を通じて人と森林との新たな関係を作り出し、豊かな森林を次世代にバトンタッチしたいと願っています。